震災瓦礫を活用し、防潮堤や海岸防災林を再生するマウンドを造ろうという 提案をしてきた。 これにより、樹木が生育する緑の防潮堤とすることができ、また、津波被災 を軽減するための防潮堤機能を備えた多目的海岸防災林とすることができる。 漁業・港湾サイドからに言うならば、緑の防潮堤。 林野・防災林サイドから言えば、多目的防災林と言うことになる。 言葉は違えども、本質的には同じものといえる。 有り体に言うならば、予算の出所が違うという人様の都合で名前が異なるも のとなる。 このような機能をもつ築堤・マウンド造りを、私は、築土(石)根系補強土に よる築堤と称し、機会をてらえて発信してきた。 今回、この提案を「三陸エコビジョン」を推し進めている「遠野エコネット」 の千葉和さんが岩手日報の記事にしてくれた。 ⇒ H240429岩手日報緑防潮堤・千葉和氏 記事内容は、技術的な部分に関する記載となったため、補足をしておく。 震災瓦礫と称しても様々なものがある。 瓦礫とは、本来廃棄物行政の用いる言葉で、コンクリート殻など無機質系、木 材など有機質系を含む。ごみ・廃棄物として処理すべきものという前提の 行政用語である。 この廃棄物行政用語が、マスコミが用いたため、誤解が生じている。 一般に、瓦礫というと木材などは含まれないが、廃棄物行政では木材までも 含め瓦礫である。 国交省では、現場から廃棄物を出さない「ゼロエミッション」の取り組みから、 これらは建設副産物ととして取扱、コンクリート・アスファルトなど無機質系 のものと、抜根・伐開材など有機質系の資材に分けてその活用を行っている。 活用という前提での交通整理といえる。 私の提案は、この震災瓦礫の活用に関するもので、コンクリートやアスファル トなど無機質系の震災廃棄物を石とみたて、盛土中に混合しマウンドを造る事 を基本としている。 盛土中に有機物を混入してしまうと、嫌気的な状態で分解・発酵し、植物の 生育障害となるばかりでなく、分解した後空洞となりマウンドの構造物として の強度をたもてなくなってしまうからである。 自然の地山は、表土か薄く、樹木は地山基岩の割れ目に根系を侵入させ、樹体 を支えるとともに、水分の吸収を行っている。 コンクリートやアスファルトなどを大きく砕き塊状として、もり立てることに より、塊と塊の間に隙間が生じ、その隙間に樹木の根系が侵入することとなり、 自然の樹林地と同様な基盤を造る事ができる。 むろん、コンクリート塊はアルカリ性となり根系侵入を阻害するため、流木・ 流失家屋などの木材を堆肥化し、コンクリート塊とコンクリート塊の間に充填 することにより、樹木根系の侵入を容易にすることができるようになる。 このようにするならば、マウンド深くまで樹木根系を侵入させることができ、 樹木とマウンドか一体となった補強土構造を築くことができる。 コンクリートを用いるようになり、巨大な構造物まで造ることができるように なり、また、要求する品質を得られ、設計・監理しやすいため、コンクリートは 多用されてきた。 しかし、コンクリート構造物の耐用年数は50年程度である。これが土木で言う、 永久構造物である。近頃では、耐久性を改良した100年コンクリートや、補修 を行う事により耐久性を増す工夫がされているが、それでも耐久年数は100年程度 といえる。 これに対し、津波は50年、100年、1000年という長期スパンで発生する。 いわゆる土木的な考え方、手法とは時間の位相が異なるものと言える。 税金を使い、多額な投資を行い頑丈なコンクリート構造物を造ったとしても、残 念ながら次の津波襲来の際には老朽化している、あるいは、作り直さなければ役 にたたないものとなっている可能性が高いと言える。 今回の津波でも、防潮堤の被災は大きく、あまり役に立ったとは言えない。 莫大な投資が、あっという間に無になってしまったわけである。 防潮堤は、もともと海岸・砂浜の地盤の脆弱なところに建設されているため、地 震による震動、あるいは地盤液状化の発生により、堅いコンクリートは追随でき ず、目地などが緩み、押し寄せる波、引く波により洗掘が発生し、破堤・倒壊し たものと考えられる。 このように考えるならば、コンクリート構造物による防潮堤は、維持管理を行い つつ定期的に作り替える必要がありながら、なおかつ、大型津波の発生の際には、 効果が期待できない恐れがあると言わなければならない。 このような懸念を避けるためには、莫大な予算をかけしっかりとした基礎工事を行い、 入念な維持管理を行いつつ、老朽化した箇所は作り替えるということを持続的に行う こととなる。 現在は、このような方向で防潮堤の建設へと邁進しているように見受けられる。 今後の社会は、少子化へ向かい税収が減少して行くことは明らかである。 これまで構築してきた道路網・橋梁などの維持管理費すら捻出が困難になってきてい る今日、巨大なコンクリート防波堤を作ることは、子孫に対して負の遺産を残すこ とに繋がる可能性があると言わなければならない。 善意の結果、子孫へ負の遺産を残すという皮肉な結果になりかねない取り組みを行っ ていると言える。 善意で行った結果、子孫へ負の遺産が残ってしまったという悲劇をさけるためには、 歴史の年月に耐え残った、歴史的な建造物に学ぶ必要があるものと考える。 古墳など歴史的建造物がそれにあたる。 これらの建造物は、「築土構木」という「土木」の語源となっているように、基盤 は土と石をうまく用い、建築資材として木材を匠に用いている。 防潮堤の建設にあたっても、このような歴史的な時間に耐え残った構造物に学び、 子孫に感謝される構造物を残したいと考え、築土(石)根系補強土による築堤につい ては、提案した。 震災瓦礫を活用して時間の重みに耐えてきた歴史的建造物に類したものを造ろうと 提案である。 ただし、コンクリート構造物・防潮堤を否定している訳では無い。漁業・港湾施設 のように重点的に守らなければならない箇所は、がっちりと守る、津波被災が人災 に繋がらない箇所は、防潮堤を造る事なく、自然の海岸はしっかり保全する、この 中間ゾーンに対し、緑の防潮堤・多目的防災林を造るなど、総合的な観点からゾー ニングを行い、目的と機能を明確にすることが必要である。 「津波で大規模な被災が発生したから危ない・危険だ」と、いたずらに恐怖感をあ おり、構造物により守ろうというこれまで通りの姿勢ではなく、人知では、人間が こしらえた構造物では自然の災害から人を守ることができないという真摯な反省に 立ち、自然と順応的に生活するという立場に立ち、子孫に感謝されるよう、知恵を 絞り出すときと言える。 このためには、これまでのルールを前提年、これに従わざる得ない行政サイドに 任しっきりにするのではなく、地域の特性・事情・風土に合った取り組みが行われ るよう、地域住民の声の結集が必要になる。 以上
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