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市場単価・物価版掲載の緑化植物について 矛盾-1

市場単価・物価版に掲載さている緑化植物と、現在設計・発注され使用が求められている生物多様性保全、周辺の自然環境に配慮した緑化植物との間に矛盾が発生している。

この矛盾を解消すべく、日本緑化工学会から修正をもとめる意見書が、市場単価調査の担当とされる九州地方整備局に提出された。
「市場単価の植生工で設定している使用植物に関する問題点と修正に関する意見書」

市場単価及びその基礎となる物価版に掲載される緑化植物に関しては、様々な問題を輻輳しているため、意見書の内容は難解である。

このため、法面緑化を行う場合、現場として理解しておかなければならない矛盾部分について、要約して示す事とした。

矛盾1.在来種(郷土種)という記載

物価版などに掲載されている緑化植物は、「在来種(郷土種)」と記載されている。
草本類のヨモギ、ススキ、イタドリ、メドハギ、及び、木本類のヤマハギ、コマツナギである。

しかし、そのすべてが外国(主として中国)の自生地で採取されたものであることは公知の事実となっている。特に、コマツナギは、性状が我が国在来のコマツナギとは大きく異なるものであることは多方面から指摘されている。
環境省・国土交通省・農林水産省・林野庁(以下4省庁)による「緑化植物取扱方針検討調査」においては、このような実態を踏まえ、「(外国産)在来種」と記載している。

このような実態が指摘されながら、積算の基礎価格となる物価版などの記載の変更がなされていないことは問題である。

問題とは、次の二つを挙げることができる。

① 周辺自然環境に配慮するとし、外国産在来種を使い続ける根拠とされている。

緑化植物に関し知識のない設計者は、物価版などに記載される在来種(郷土種)という記載を鵜呑みにし、あるいは、よりどころとし、周辺の自然植生に配慮し自然に優しい緑化を行うとして、物価版記載の在来種(郷土種)を用いる事例が増加している。
外来牧草の使用が制限された場合、代替として物価版に記載している在来植物(郷土種)を使えば良いだろうという判断である。

我が国在来の植物であるかのような記載のため、発生する問題である。
これにより、自然度の高い地域に、(外国産)在来種が用いられることとなり、自然に優しい緑化、生物多様性保全などを謳いつつ、外国産の遺伝子を持った植物を導入するという愚行をおかす原因となっている。

生物多様性保全に対する配慮は多岐にわたるが、法面緑化を行うに際しては(1) 侵略的な外来生物を用いない、(2) 同地域に分布する植物の同種・近縁種を用いることにより、地域固有種の遺伝子レベルの汚染、すなわち、交雑を防ぐ、の二点が重要である。

外来生物というと、(1)の部分に目くじらをたて、これまで50年あまりの使用実績をもつ牧草類を、外来というだけで、外来牧草を悪者扱いする傾向が強い。

しかしながら、これら外来牧草は日当たりの良好な裸地状の箇所でしか生存ができず、自然度の高いうっ閉度された原野や樹林地には侵入・定着できず、外来牧草を用い法面を緑化したとしても20~30年の後には法面上に樹林が形成され、周辺自然に同化するものであり、自然回復のスターターとしての役割を果たしてきた。
この点では、牧草は外来ではあるが実質的な問題の発生は少ないものと言うことができる。

これに対し、(外国産)在来種は、我が国に同種の植物が自生するものであり、交雑による遺伝子の汚染が発生するものである。また、一端発生した遺伝形質の変化は、回復不能なものとなる。
目に見えない形で、生物多様性が浸食されてゆくものであり、問題の発生は潜伏し、より深刻といえる。

外来牧草は、逸出が発見されたならば判別は容易でありね駆除可能である。
これに対し、交雑・遺伝子レベルの汚染は取り返しのつかないものとなる恐れがある。

しかしながら、外来牧草の使用を咎める声は大きいが、(外国産)在来種を用いる事を咎める声が上がらないことは、不思議である。
このためか、物価版などでは、「在来種(郷土種)」という記載を改める必要性を認めてこなかったものと考えられる。

② 設計で周辺自然に配慮した緑化を謳っても、積算は市場単価のため、設計に即した施工をなすことができない。

物価版記載緑化植物は、市場単価の基礎となるものである。
すなわち、積算の根拠として重要な位置を占めるものである。
現在、法面緑化工はすべて市場単価により積算され発注されている。
市場単価に用いられる緑化植物は、法面の浸食防止を行う事を目的としたものが主であり、急速にの法面を緑化・被覆するために用いる事が前提となっているものである。

一方では、生物多様性国家戦略が策定され、生物多様性保全が行政の内部目的化され、外来生物法など、生物多様性保全を図るための施策が進められている。

このような動きを受け、国土交通省では、平成21年6月に発行した「道路土工-切土工・斜面安定工指針」では、植生工の部分について、生物多様性保全に配慮した改定がなされた。この改訂にあたっては、筆者も意見書を提出した。

林野庁では平成17年~19年「特定外来生物による被害の防止などに配慮した緑化植物取扱方方針検討調査」、平成20年~平成21年「荒廃地緑化手法検討調査」を実施し、筆者も委員として参加し意見を述べた。これらの成果を総合し、平成23年1月に「林野公共事業における生物多様性保全に配慮した緑化工の手引き」、手引きの別冊として、「同手引きに沿って実行する工事の施工、保育・管理ガイドブック」が作成された。

以上に示したように、仕様書・設計書レベルでは生物多様性保全に配慮した方向へと進んでいる。

従って現在は、設計と積算が矛盾し、整合性の取れない上程のまま放置されている状態となっている。
設計は、周辺自然環境に配慮した緑化を求めるが、積算は市場単価によるため、外来牧草・(外国産)在来種を用いる基礎価格となっている。

設計と積算の間の矛盾・齟齬については、受注した業者が良きに計らえというものである。
従って、①に示した、周辺自然に配慮した緑化が、物価版に記載された在来種(郷土種)を用いるということとなってしまう。

積算の基礎となる市場単価・物価版が、現状の設計仕様に追随し改訂されないために発生する矛盾であるが、生物多様性保全に与えている影響はおおきい。

現状に合わせた、早急なる改善を望むものである。

関連ブログ 「緑化工あれこれ」 もご覧ください。

その2に続く

茨城県法面技術協会「のり面工・植生緑化工技術講習会」

茨城県法面技術協会主催「のり面工・植生緑化工技術講習会」で、道路土工-切土工・
斜面安定工指針のなかの景観・環境、及び法面緑化の部分について講習を行いました。

事前申し込み者が官庁・コンサルタントが、70名強、施工業者が20名と言うことでした
が、最終的には100名を超える出席があったものと思います。
会場はびっしりとなりました。

のり面工・植生緑化工技術講習会
日時:平成24年8月24日(金) 13:30~16:40
会場:(財)茨城県建設技術管理センター
演題/講師
1.「道路土工-切土工・斜面安定工指針」の切土工、抑制工、抑止工、排水工について
上野将司 応用地質(株)技術本部技師長 博士(工学)、技術士(応用理学・建設)
2.「道路土工-切土工・斜面安定工指針」の景観・環境対策、植生緑化工について
中野裕司 エコサイクル総合研究所/中野緑化工技術研究所
非営利特定活動法人日本緑化工協会技術委員長 技術士(森林)

上野さんは、豊富な事例をもとに法面保護工・安定工の全容について講演され、
土工指針の内容に対する理解が進んだものと思います。
道路に対する土石流、表層崩壊は、周辺の地形・地質状況をキチッと見定めることに
より、防止することが可能箇所が多々あり、そのポイントなどについては大いに参考と
なったものと思われます。

私に与えられた課題は2.景観・環境対策、のり面緑化工です。
上野さんは、土工指針検討小委員会委員、および執筆者ですから解説する資格者と
言えます。私は委員ではありませんが、指針改定の際、法面緑化工の部分の添削を
依頼され、問題点の指摘を行ったという立場で、話をしました。
このため、タイトルを次のように変更をしました。

「道路土工-切土工・斜面安定工指針」景観・環境対策、のり面緑化工の補遺・解説

公の指針に対し、補遺・解説をしようというのですから、何様だ、という事になりますが、
残念ながら、法面緑化の部分は荒削りで未完成と思われるため、不足する情報を入れ
込みつつ解説を行いました。

不足する点としては、次の項目を挙げることができます。

1.地域区分(環境区分)が示されていない。
環境・景観対策の項目では、「自然環境対策の考え方の一例」として、
A.特に注意を要する自然環境地域
B.上記以外の自然環境地域
C.自然豊かな都市環境地域
と3区分され地域区分、ゾーニングの例が示されております。

このような例が掲載されていながら、のり面緑化工には地域区分に関する言及がなさ
れておらず、このため、外来牧草を用いた急速緑化を行うことができる箇所、生物多
様性に配慮しなければならない箇所などをどのように区分するのかが不明となっている。

この点については、林野庁計画課施工企画調整室が平成23年1月に配布した、
「林野公共事業における生物多様性保全に配慮した緑化工の手引き」において緑化
水準として整理がなされており、参考に供する必要がある。
この手引きでは、
緑化水準A.生物多様性保全上極めて重要な地域・超遅速緑化
緑化水準B.生物多様性保全上重要な地域・遅速緑化
緑化水準C.生物多様性保全上地域的な配慮が必要な地域・急速全面緑化
と区分している。C、B、は外来牧草を用いても良く、
Cは、従来の浸食防止を緑化目的とし、急速全面緑化を図ることが望ましい箇所であ
り、Bは、外来牧草を用いるが、播種量低減手法により、粗な植生状態を造成し、
周辺植生の侵入定着を容易にし、速やかに周辺樹林へと遷移を図るものである。
これに対しAは、導入植物の遺伝子レベルにまでの配慮、すなわち交雑させない
ため、地域性種苗を用いなければならない箇所という事になる。

このような地域区分・環境区分・緑化水準を設けることにより、その地域、現場の緑化
目的、緑化目標が定まり、導入植物の選定、緑化工法の採用が容易となるものである。

2.緑化目標が曖昧である
外来牧草を用いて急速全面緑化を行う場合は、草原型の法面植生を単期間で造成
する事がてきるが、周辺環境になじみ、樹林状の群落が形成されるまで30年以上の
年月が必要となる。
これに対し、自然回復・生物多様性保全に配慮した法面緑化を行う場合は、5~10年で
樹林状の群落を造成することとなり、その後は、自然の推移に任せることとなる。
このため、緑化目標と一口に言っても時間に大きな差が生じてしまうこととなる。
しかし、土工指針では「最終的に形成する群落型等の緑化目標」記すだけで最終の
実態が明らかにされていないため、混乱を発生させることとなる。
日本緑化工学会斜面緑化研究部会では、「自然回復緑化の考え方」において、緑化
目標は、「最終緑化目標」推移可能であり、技術的に予測し造成できる範囲の群落型を
「初期緑化目標」とすることを提案している。この場合の予測とは5~10年で樹林状の
群落の造成が可能という程度である。

このような未整理の部分などについて示しつつ、解説を行った。