「都市環境へ適合した生態系造成のための気候変化対応に関する研究」国際セミナー
「都市環境へ適合した生態系造成のための気候変化対応に関する研究」国際セミナー
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日時:平成25年3月06日(火) 14:00~18:00 場所:ソウル(韓国) SNU Hoam Faculty House,Convention Center 1F,Water lily セミナー内容: ・中野裕司(エコサイクル総合研究所/中野緑化工技術研究所) 都市生態系造成のための植物生育基盤造成の取り組み ・中村富男(ワークソリューションNOW) 有機資源の循環による都市生態系復元技術 ・前田正明(屋上緑化マネジメントサービス) 都市の中に残された空間 駐車場緑化・多機能型防災駐車場 ・李東根(ソウル大学教授) 都市土壌の生態系復元・Gold Network ・討議 座長:壇国大 Kim Young-ja
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・開催趣旨
都市生態系の再生・復元というと、地上部とそれを取り巻く環境要因に関した議論が行われてきた。
今回の国際セミナーは、もう一歩突っ込んで、植物の地上部を支える地下・根系・土壌微生物をも含む土壌環境の復元・再生を図ることをテーマとして実施した。
都市生態系の基盤となる土壌環境を整備することにより、ヒートアイランドの緩和・都市洪水などに対応可能な生態系の造成が可能となるものと考えるからである。
合わせて、東日本大震災の津波被害などの反省より、都市緑化としては未利用空間としてのこされている立体駐車場を緑化空間、及び避難所として活用する検討研究についての情報を示した。
都市生態系の造成は、土壌に根系を伸長させ生育する樹木・樹林が健全に生育できる土壌をも含む環境造成であるとともに、建築物壁面・屋上、あるいは、立体駐車場などを有機的・立体的にネットワークすることが必要であり、よりより緑地造成が気候変動による都市災害の減災につながるものと考えるからである。
・中野の講演内容
土壌は、陸上植物の生存を支えるため「海」の機能を陸上に持ち上げたものであり、そのような観点からの土壌・生育基盤整備を行う必要がある。
また、土壌というと、農地土壌の考え方の影響が大きく、均一な土層を想定することが多い。しかし、自然界の土壌の多くは、岩盤の上に薄層の土壌が存在、石礫地など不均一で僅かな土層の中で植物・樹木は生存している。このような土壌をモデルとした土壌づくりが都市部でも必要。
近頃では、耐圧基盤・ストラクチャルソイルミックス(SSM)等という概念が出てきたが、法面緑化の世界では30年ほど前からアスファルト破砕物を有機質系資材と混合し植物生育基盤を造成する技術(ミライクル緑化工法)が開発・実施され、地温が上昇するなどのデータがあり、良好な成績を示している。
この技術は、高温多雨な地域に人為的に乾燥型の生態系を造り出し草花を咲き誇らせるグラベル緑花工法、これを応用した都市屋上緑化技術「GreenField無灌水屋上緑化システム」、さらには、耐圧基盤として街路樹、学校校庭緑化、緑の舗装などとして用いられている。
また、近頃では、このような技術を用いて、東日本大震災の津波被災跡に、築土(石)樹木根系補強土により築堤を行い、海岸防災林・緑の防潮堤を造るよう提案をしている。
都市部では、人・車の通行による踏み固め・踏圧と植物の生育を両立させなければならず、耐圧基盤を用いる事が有利である。
耐圧基盤は、骨材のかみ合わせにより荷重を支え、かみ合わせの間の隙間に植物根系を誘導するものであり、根系発達が良好となることが確認されている。
このような技術を活用し、植物根系の発達を促すことにより、より健全な地上部が形成され、多様な生物が生息する緑空間・都市空間が形成されるものと考える。
また、健全な樹木が生育することにより都市生態系が形成され、あわせてヒートアイランドなど都市環境の緩和が可能となる。
また、耐圧基盤はポーラスで空隙が多いため、降水は速やかに耐圧基盤中に浸透・貯留されるため、ゲリラ降雨・異常発達した台風などによる都市洪水の抑制・地下水涵養に対しても効果的である。
・中村富男氏の講演内容
都市緑地で発生する整枝剪定屑・刈草などは、堆肥化して都市土壌・植栽基盤に還元することが必要。
これによって、土壌微生物の生態系のバランスが取れ、かつ、都市有機性廃棄物の減少を行うことができるようになる。
また、都市部水域は富栄養化しており、水草・藻が異常発生している。
これを放置しておくならば、繁茂した藻などが枯死し、分解・腐敗し水底にヘドロとして堆積し、水質をさらに悪化させる元となる。
このような水草・藻などは、水分が多いため堆肥化は困難であるが、適正な技術を用いるならば堆肥化可能である。
堆肥化させた上、都市生態系を豊にするために土壌還元してあげることが望ましい。
これにより、土壌環境をも含めた健全な都市生態系が機能する。
しかし、現在の堆肥化技術は、都市衛生工学の延長線上にある、好気性菌を主とした分解・減量化の技術であり、アンモニア臭など臭気をともなうものが多く、良質な堆肥とは言いがたいものがある。
土壌還元する堆肥は、農業分野で培われて来た本来の堆肥化技術を用いる事が大切であり、好気性菌と嫌気性菌が共々働き有機物を分解し、植物に取って有効な成分を合成する発酵堆肥とすることが必要である。
堆肥化に必要な発酵菌は、土着菌を用いる事が好ましく、土着菌を培養して堆肥を行った中国・フィリッピンなどの事例を紹介した。
発酵堆肥は、悪臭を発生させること無く堆肥を造ることができ、植物の生育に対し有効な成分を含むものであり、発酵堆肥を都市植栽基盤に還元することにより、良好な都市生態系を再生することができる。
・前田正明氏の講演内容
都市緑化機構の都市緑化共同研究会・特殊緑化共同研究会において検討がなされている「駐車場緑化」について報告を行った。
高密度で利用されている都市空間の中で、緑化可能な空間として駐車場のスペースが注目されてるいる。
なかでも立体駐車場は未利用空間として残されており、快適なまちづくりのため積極的に取り組むべき場所と考えている。
立体駐車場は、緑化空間として用いるのみならず、津波被災などの場合、駐車場空間を避難地・仮設住宅設置空間としても活用可能であり、普段から壁面緑化・屋上緑化などを行い、快適な空間としておくことが、いざという時に役に立つ。
今後の立体駐車場は、多機能型防災駐車場としての活用が望ましい。
都市生態系の回復と、都市立体駐車場などの未利用空間を緑地として有機的・立体的に組み合わせることにより、より良い防災都市が形成できるものと考えられる。
以上


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